航空・宇宙産業では高い安全性と耐久性が求められるため、モノづくりの設計・製造・品質管理等において非常にシビアな要求事項をクリアする必要があります。そんなモノづくりにシビアな航空・宇宙産業ですが、意外にも3Dプリンティング技術が積極的に採用されているのをご存じでしょうか?

今回は航空・宇宙産業の主要企業別に3Dプリンタの活用事例をご紹介させていただきます。

ボーイング

B787ドリームライナーのチタン製の部品について、2017年に初めて3Dプリンタで作製した部品を採用しました。
現在(2021年1月時点)開発中のB777の後継機であるB777Xに搭載されるGE社製のエンジン「GE9X」の温度センサーや燃料ノズルなどについても、3Dプリンタで作製した部品が約300点採用され、2020年1月にテスト飛行を無事に終えました。

ボーイング

エアバス

3Dプリンタ業界大手のStratasys社と共同で部品開発に取り組んでおり、2015年以降ブランケットなどの非構造部品をFDM方式3Dプリンタで製造し、実際に航空機に搭載しています。最新機種のA350では、機体のチタン製の構造部品についても3Dプリンタでの作製が始まりました。
3Dプリンティング技術で作られた部品は最大で55%の軽量化と90%の材料削減ができたとしており、今後も研究を進めて幅広い範囲で導入していくとしています。

エアバス

スペースX

最近では日本人宇宙飛行士の野口さんが国際宇宙ステーションまで行くために使われたロケットがスペースX社製ということで話題となりましたが、そのロケットでも開発段階から3Dプリンタを使ってバルブなどを製作したとされています。
3Dプリンタ活用の決め手としては、短納期・低コストで部品の改良ができることが大きなポイントとなったようです。

spacex

NASA

NASA(アメリカ航空宇宙局)ではロケットの製造に3Dプリンティング技術を活用しているだけではなく、国際宇宙ステーション内に3Dプリンタを設置して、宇宙空間における3Dプリントの実験も行っています。
国際宇宙ステーションでは機材にトラブルが起こった際に地上から3Dデータを受信し、その場で代替パーツを作ることができるなど、様々なメリットがあるとされています。

nasa

JAXA

日本が誇るJAXA(宇宙航空研究開発機構)でも、ロケット開発などの様々な分野で3Dプリンティング技術が活用されています。
最近、注目された事例としましては、早稲田大学と共同研究を行ったネジを使用しない人工衛星があります。研究・開発の工程で3Dプリンタを用いることでスピーディーに試作・実験・改良の繰り返しができたとされ、将来的には人工衛星そのものが3Dプリンタで全て作られる日も遠くはないとコメントしています。

jaxa

中国航天科技集団

中国の宇宙産業を担っている国営企業の中国航天科技集団は、2020年5月に宇宙空間において人類初の完全無人での3Dプリントに成功したと発表しました。宇宙空間における3Dプリントについては国際宇宙ステーションにて有人での実験が行われていましたが、今回は完全に無人であったということで大きく注目されました。
この技術を活用することで軌道上や宇宙空間での開発をより早く進展させることができると期待されています。

中国航天科技集团

日本航空

飛行機を『作る』側の会社ではなく『飛ばす』側の会社である日本航空も、社内外のアイディアや知識を活かして新しい付加価値やビジネスを創出することを目的とした施設“JAL Innovation Lab”を2018年に開設しています。
その施設には3Dプリンタなどが設置されており、試作品の製作も積極的に行われています。

日本航空

番外編:期待の企業

「まるごとロケットを3Dプリンタで作ろう」と2人のエンジニアが立ち上げた会社がRelativity Spaceです。2人ともスペースXなどで働いてきたエンジニアでまだ20代ですが、なんと起業早々50万ドルの資金調達に成功しました。最大の特徴は自社で3Dプリンタ「Stargate」を独自開発してしまったところです。
最初の商用打ち上げは2021年初旬を予定しており、続報が入り次第お伝えさせていただきます。

relativityspace

航空・宇宙産業における3Dプリンティング技術のまとめ

品質に厳しい航空・宇宙産業においても、3Dプリンティング技術が必要不可欠な技術になりつつあるということをご紹介させていただきました。さらに技術革新が進めば3Dプリンティング技術の活用範囲がさらに広がっていくのは間違いありません。
今後、3Dプリンティング技術に関する新たな発表があった際には、いち早く発信していきたいと思います。

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この記事を書いた人

3Dモノづくりラボ編集部

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