今回は自動車業界の国内外のメーカーが3Dプリンタをどのように活用しているかについてご紹介させていただきます。
目次
トヨタ自動車
カーシートの軽量化のためのプロトタイプの製作や、海外工場では量産用アルミダイカストの金型の製作などにも3Dプリンタが活用されています。
またモータースポーツ活動を通じた自動車工学の発展を目的として設立されたトヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパは、3Dプリンティング技術を活用した革新的な設計・製造に関して3D Systems(米の3Dプリンタメーカー)と共同研究を行っています。
日産自動車
3Dプリンタを用いたシリンダーヘッドの試作を行っており、さらにエンジン部品の軽量化のために3Dプリンティング技術の活用が検討されています。
パワートレイン生産技術開発本部の塩飽氏は、2019年に開催された3D プリンティングフォーラム 2019にて、「吸気・排気のメカニズムの確認といった機能性の評価では十分に使える。従来の2~3カ月から5日に短縮でき、開発スピードが上がった。」と講演しています。
その他の動きとしては、アフターマーケットパーツを製造する目的で、Solize(日本)・HP(米の3Dプリンタメーカー)と提携し、スカイラインGT-R R32 / R33 / R34用のパーツを3Dプリンタで製作しています。
本田技研工業
2019年に3Dプリンタの活用シーンを広げるための研究を加速させることを発表し、人気車種のN-BOXのシリンダーブロックのアルミ鋳造用金型の製作に3Dプリンタの活用を始めました。2020年には3Dプリンタで製作されたクランクシャフトを発表して業界関係者を驚かせたのは有名な話です。
また、過去の興味深い取り組みとして、歴代のコンセプトカーを家庭用の3Dプリンタで出力できる3Dデータの配布も行っていました。(※現在は終了しています。)
ダイハツ工業
2017年に鋳造部品の生産に必要な砂型を3Dプリンタにて製作するための新技術を開発したと発表しました。
また、Stratasys(米の3Dプリンタメーカー)と共同で、コペンのドレスアップパーツの製造も行っています。
メルセデスベンツ
約30年前から製造現場に3Dプリンタを導入しており、2016年からは一部の最終部品の製造にも使用しています。
2018年にはクラッシクカーの一部のリペアパーツについて3Dプリンタによる製造を開始していますが、品質的にはオリジナルパーツとほぼ同等かそれ以上で、最新の安全基準を満たしたパーツに生まれ変わったものもあるようです。
BMW
2018年の時点で年間100万個のパーツを3Dプリンタで製造しており、3Dプリンタで製作したシリンダーヘッドを搭載した高機能エンジンについての発表も行っています。
ドイツのミュンヘン北部のオーバーシュライスハイムに1000万ユーロ(約12億円)を投資してAdditive Manufacturing Campus(アディティブ・マニュファクチャリング・キャンパス)を設立し、今後も3Dプリンタを用いた技術革新を進めていくようです。
ロールスロイス
フラッグシップモデルのファントムのパーツは、約1万点以上が3Dプリンタで製造されているとされています。
今後は3Dプリンタを活用した金型や治具が必要のない生産方法の採用を加速させることで、開発と製造のリードタイムの短縮を目指しています。
GM
2020年12月にUSAのミシガン州デトロイト郊外に3Dプリント産業化センターを開設し、選択的レーザー焼結(SLS)や選択的レーザー溶融(SLM)などの様々な造形方式の3Dプリンタに関する研究を行っています。
新型のコルベットのために開発されたブレーキ冷却ダクトには3Dプリンティング技術が活用されており、組み立てに使用する100種類もの工具も3Dプリンタで製作されています。
フォード
2019年に4000万ドル(約40億円)を投資してUSAのミシガン州レッドフォード・タウンシップにAdvanced Manufacturing Center(アドバンスド・マニュファクチャリングセンター)を開設しました。100人のエキスパートが常駐し、3Dプリンティング技術の研究開発が日々行われています。
完成品としてはFord Shelby Mustang GT500に2つの3Dプリント製ブレーキ部品が採用されており、今後も活用範囲を広げていくとのことです。
自動車業界における3Dプリンティング技術の活用に関するまとめ
日本国内と海外の自動車メーカーの3Dプリンティング技術に関する動きを見て来ましたが、海外ではすでに30年以上も前から製造現場に取り入れているメーカーもあり、現時点では国内よりも海外のメーカーの方が3Dプリンティング技術の活用に積極的なイメージです。
ただ、国内の各メーカーの発表にもあるように3Dプリンティング技術の積極的な研究開発と活用に関する計画を立てており、今後10年で自動車の製造に関して大きな技術革新が起きるのは間違いないと思われます。
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