部品や金型を3DスキャンしてCAD化するという意味でのリバースエンジニアリングは、ものづくりの開発工程や量産工程に大きなメリットをもたらす手法として注目されています。
例えば、他社製品を3Dデータ化して解析を行ったり、老朽化した図面の無い金型を3DCAD化して復元したりするなど、様々な場面でリバースエンジニアリングが活用されています。
そうした活用が広まっている一方で、リバースエンジニアリングによりどのようなデータを作製することができて、どういったことに利用することができるのかが十分に理解されていないことも事実です。
そこで今回はリバースエンジニアリングの種類と用途についてご紹介します。
目次
使用設備・ソフトウェア
3Dスキャナ
■メーカー:GOM社
■型式:ATOS Q 12M
■仕様:
・光源…LED(青色)
・センサー画素数…1200万点/ショット
・使用レンズ…MV170(測定精度:0.009mm)
リバースエンジニアリングソフト
■メーカー:3D SYSTEMS社
■型式:Geomagic Design X
■特徴:
・サーフェス抽出機能が優れている。
・オートサーフェスデータの作製ができる。
3DCADソフト
■メーカー:Robert McNeel & Associates社
■型式:Rhinoceros 7
■特徴:
・自由曲面形状の作製が得意。
・サーフェスの統合ができる。
リバースエンジニアリングの種類と用途
対象部品
・用途:電動シェーバーの充電器
・サイズ:50×80×100 [mm]
・材質:プラスチック(※詳細不明)
3Dスキャン
黒色で光沢もありましたが、これぐらいであれば反射防止用のスプレーを塗布せずに3Dスキャンを行うことが可能です。
3DCADデータの作製
3DCADデータの作製方法は大きく分けると『オートサーフェス』『フルリバース(面構築)』『ハイブリットモデリング』の3種類に分類できます。
オートサーフェス
オートサーフェスとは、3DスキャンしたSTLデータをそのまま用いてパッチワークのような面を自動で貼り付けて3DCAD化する手法です。
<用途>
・CAE解析
・簡易的な寸法測定・形状評価
<メリット>
・工程数が少ないため費用が安く、納期も短い
・現物との形状の差異は少ない
<デメリット>
・データの修正・変更を行うことができない
・エッジや微小R等の再現が困難
フルリバース(面構築)
フルリバースとは、3DスキャンしたSTLデータをベースに全ての面を定義・構築して3DCAD化する手法です。一般的な設計データと同じ作り方になります。
<用途>
・設計の検討
・加工用の2D図面の作製
・ASSY図面の作製
<メリット>
・データの修正・変更ができる
・様々な用途で使用できる
<デメリット>
・工数がかかるため費用が高く、納期も長い
・データの作り方によっては現物の形状との
ズレが大きくなる可能性がある
ハイブリッドモデリング
ハイブリッドモデリングとは、全体をオートサーフェスで作製し、重要な形状のみフルリバース(面構築)にて作製する3DCAD化の手法です。
<使用用途>
・CAE解析
・簡易的な寸法測定・形状評価
<メリット>
重要な形状のみ面構築で作製することで
費用を抑えることが可能
<デメリット>
オートサーフェスで作製した周辺のデータは
修正・変更ができない
フルリバース(面構築)の方法
①自由曲面の抽出
Geomagic Design Xにスキャンデータを
インポートし、領域分割を行ってから
自由曲面を抽出する。
②抽出した自由曲面の貼り合わせ
抽出した面をRinocerosへインポートし、
面の延長やトリムを行い、貼り合わせ形状
を作製する。
③断面線等のスケッチ及び形状の作製
面を抽出できなかった形状の断面線を
STLデータよりスケッチし、形状を作製
する。
④フィレット等の作製及び仕上げ
最後にフィレットや面取り形状を作製し、
STLデータとCADデータの偏差を確認して
完成となる。
まとめ
リバースエンジニアリングの3種類の方法につきまして概要をご紹介しましたが、「3DCAD化」と言っても様々なアプローチの仕方が存在します。
また、今回は3Dスキャナを使用して形状のデータを取得しましたが、対象物の形状や要求される再現性の高さによってはX線CT装置や三次元測定機、3D形状測定機等の使用が必要になることもあります。
全てのリバースエンジニアリングがフルリバースである必要はなく、上記のように3DCADデータの用途によって適切な方法が異なります。本ブログをご参考にリバースエンジニアリングの方法をご検討いただけましたら幸いです。
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