今回は3Dプリンタに関する様々な用語をご紹介させていただきます。

3Dプリンタのスペック表記などに使用される用語

積層ピッチ

3Dプリンタは非常に薄い層を少しずつ積みあげてモデルを造形していきますが、積み上げていく際の1層分の厚みのことを「積層ピッチ」と言います。積層ピッチが小さいほど造形物の密度が高くなって強度が増し、積層痕が小さくなって表面が滑らかになるというメリットがありますが、小さくした分だけ造形時間が長くなるというデメリットもあります。

サポート材

造形の途中にモデルが変形したり落下したりしないように支えてくれるのが「サポート材」になります。モデルが中空になる箇所全てをサポート材で埋めることもあれば、落下しないように部分的にサポート材が付くだけのこともあります。サポート材の材質は造形物と同じ場合と異なる場合とあり、異なる材質のサポート材は溶剤や水に漬けておくだけで簡単に除去できる3Dプリンタもあります。

DPI

「Dots Per Inch」の略。ドット密度を表す単位のことで、1インチの幅のなかにどれぐらいのドットを表現できるかを表したもの。インクジェット方式の3DプリンタのDPIは、インクを噴射する間隔のことを表しています。

造形サイズ

3Dプリンタで一度に出力できる造形物の大きさのことを「造形サイズ」と言います。この造形サイズが大きければ、大きな造形物を作ることができることになります。

造形エリア

3Dプリンタで造形を行うことができる範囲のことを「造形エリア」と言い、X×Y×Z(mm or μm)で表記されます。ノズルやレーザーなどの加工ヘッドが動くことができる空間となり、当然この空間に収らないサイズのモデルは作製できません。この空間に収まっていれば小さいモデルを一度に複数個造形することも可能です。

CAD

コンピュータを用いて設計・製図を行うこと、もしくはそのためのツールのことを「CAD(Computer-Aided Design)」と言います。CADで設計した3DデータをSTL形式に変換し、3Dプリンタへ転送して造形を行います。

STL形式

「STL」は元々はStereolithography(光造形法)が名称の由来ですが、Standard Triangulated Languageの略称とされることもあります。3D形状データを保存するためのファイルフォーマットの一つで、ほとんどの3Dプリンタで使用することが可能です。立体形状を三角形ポリゴンの集合体で表現するためファイルサイズは比較的小さいですが、滑らかな曲面を表現することはできません。曲面を詳細に表現するためにポリゴンを小さくしたり、形状が複雑でポリゴンの数が多くなるとファイルサイズも大きくなります。

3Dプリンタの造形方式に関する用語

光造形方式(レーザー)

レーザーを使った「光造形方式」は最も古い3Dプリンタの造形方式になります。光に反応して硬化する液状の光硬化性樹脂に、紫外線レーザーを一層ずつ当てて硬化・積層して造形物を作製します。形状の再現精度が高く、表面が滑らかな造形物を作ることが可能です。

面露光方式

「面露光方式」は光造形方式の一つで、形状に合わせてプロジェクターでUV光を照射し、光硬化性樹脂を硬化・積層させます。造形スピードが速く、表面が滑らかな造形が特長です。

熱溶解積層方式

「熱溶解積層方式」はFDM方式やFFF方式とも言われます。フィラメントと呼ばれる熱可塑性樹脂を高温で軟らかくしてヘッドから押し出し、その樹脂を積層させることで造形物ができます。仕組みが単純なため一般向けの低価格装置の多くはこの方式を採用しています。強度のある造形物を作りやすいのが特長です。

粉末焼結積層方式

「粉末焼結方式」はSLS方式とも言われます。粉末状の材料にレーザーを照射して焼き固めて造形物を作製します。ナイロンなどの樹脂材料の他に金属材料も使用可能で、耐久性のある造形物を作ることができるため最終製品としても用いられます。ただし、粉末材料を使用するため装置自体と設置環境の整備に非常にコストがかかります。

インクジェット方式

「インクジェット方式」には液状の光硬化性樹脂を噴射して特定の光で硬化させる方式(マテリアルジェット方式)と、敷き詰められた粉末材料に液体のバインダを噴射して固める方式(粉末固着方式)の2種類の方式があります。

マテリアルジェット方式

「マテリアルジェット方式」はインクジェット方式の一つで、樹脂材料をインクジェットのヘッドから噴射して紫外線で硬化しながら積層する方式です。微細な粒子を噴射して積層面を作り上げるため表面が滑らかとなり、高い再現精度が求められる造形物の出力に適しています。

粉末固着方式

「粉末固着方式」もインクジェット方式の一つで、薄く敷き詰めた粉末の石膏にインクジェットのヘッドからバインダを噴射して固めながら積層する方式です。造形スピードが速く、インクで着色したバインダを使用することでフルカラーでの造形も可能です。

複合装置(ハイブリッド装置)

3Dプリンタの世界における「複合装置(ハイブリッド装置)」とは、3Dプリント以外の機能を備えた装置のことを意味します。3Dプリント以外の機能としては、切削加工やレーザー刻印、3Dスキャンなどがあります。切削加工機能が付属していれば、表面状態の粗い金属造形物を加工して精度を向上させることができますし、3Dスキャン機能が付属していれば、3Dデータが無くてもいきなり3Dのコピー品を作製することができます。

3Dプリンタの用途などに関する用語

ラピッドプロトタイピング

「ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping) 」とは、製品開発においてデザインや機能を確認するために短期間で試作品を作製することを意味します。従来の木(モックアップ)や粘土(クレイモデル)などによる試作では時間がかかっていましたが、3Dプリンタの登場により短時間・低コストで試作品を作製できるようになりました。

ラピッドマニュファクチャリング

「ラピッドプロトタイピング(rapid manufacturing)」とは、3Dプリンタを使用して3DCADデータから迅速に最終製品を作ることを意味します。プレス加工や樹脂成形のように型を作らずに直接製品を作製することができるため、市場に出るまでの期間を短縮することが可能となります。ただし、現在の3Dプリンティング技術では造形に時間がかかる上にコストもかかるため、多品種少量で高価な製品でなれば採算が合わないのが現状です。

ロストワックス

ロウ(ワックス)を使用した精密鋳造方法の一つ。ロウで目的の製品と同じ形状の型を作製し、その型を石膏で覆い固めて中のロウを溶かし、その空洞に金属を溶かして鋳物が完成します。この「ロウで目的の製品と同じ形状の型を作製」の工程で3Dプリンタが活用されています。

鋳造

溶かした鉄や銅、アルミなどの金属を型に流し込んで製品を作る方法。鋳造で使用される型は「鋳型」と呼ばれますが、砂の鋳型を作ることができる3Dプリンタも市販されています。

3D切削加工機

3DCADデータをもとにCAMデータ(加工プログラム)を作製し、材料から製品への削り出しを自動で行うことが可能です。広い意味ではラピッドプロトタイピングの一つであると言えます。3Dプリンタに比べて加工可能な材料が多く、製品と同じ材料を使用できるというメリットがあります。また、加工速度が非常に速いため、複雑な形状や薄肉な形状でなければ、3Dプリンタよりも短期間・低コストで製品を作ることが可能です。

ラティス構造

枝状に分岐した格子が周期的に並んだ構造のことを「ラティス構造」と言います。3Dプリンタよっては製品の内部をラティス構造にして造形することができますので、部分的に中空構造となり使用材料量の低減と軽量化が可能です。

3Dプリンタの材料に関する用語

マテリアル

3Dプリンタで造形に使用する材料のこと。樹脂、金属、石膏、セラミック、食品、細胞、コンクリートなど、様々な3Dプリンタが開発されることで使用できる材料の種類も増えています。

ABS樹脂

加熱すると軟化し、冷却すると硬化する樹脂(熱硬化性樹脂)の一種であるABS樹脂は、耐衝撃性や剛性に優れています。切削・溶接・塗装メッキのような加工がしやすいという特長があり、電化製品の外装部品や事務機器のボディーなど幅広く用いられています。主に熱溶解積層方式の3Dプリンタで材料として用いられています。

PLA樹脂(ポリ乳酸)

PLA(ポリ乳酸)樹脂は、イモ類やトウモロコシなどのデンプンから作られる植物由来のバイオプラスチックの一種です。高温に弱くて硬いという特徴を持っているため、やすりがけなどの加工がしづらく塗料もなじみにくいというデメリットがありますが、材料に粘り強さもあるため大型サイズの3D造形に向いています。主に熱溶解積層方式の3Dプリンタで材料として用いられています。

ポリカーボネート樹脂

ポリカーボネート樹脂はABS樹脂と同じ熱可塑性樹脂の一種で、「PC」や「ポリカ」と呼ばれることもあります。透明性や耐熱性、耐衝撃性などに優れており、航空機や輸送機器、電子光学、医療機器などの材料として利用されています。熱溶解積層方式の3Dプリンタで材料として使用することが可能です。

ナイロン樹脂

ナイロン樹脂はポリアミド(PA)合成樹脂の一種で、強度や柔軟性、靭性、耐熱性などに優れています。熱溶解積層方式や粉末焼結積層方式の3Dプリンタで材料として用いられています。

アクリル樹脂

高い透明性を有する非晶質の合成樹脂であるアクリル樹脂は、紫外線硬化タイプ(光造形方式)の3Dプリンタでよく利用される材料です。透明性の高さから水槽やレンズなどの材料としても用いられています。

ABSライク樹脂

紫外線硬化タイプの3Dプリンタで使用される材料の一種で、アクリル樹脂をベースとしてABS樹脂に似た物性になるように調整された材料となります。ABS樹脂に比べると強度は劣りますが、表面が滑らかで微細な造形物を作ることができるため、部品の組み付けの確認や注型のマスターなどの用途で使用されています。

PPライク樹脂

PP(ポリプロピレン)ライク樹脂は、紫外線硬化タイプの3Dプリンタで使用される材料の一種で、アクリル樹脂をベースとしてPPに似た物性・色調になるように調整された材料となります。PPと同じように高い強度と柔軟性を有しています。

ゴムライク樹脂

紫外線硬化タイプの3Dプリンタで使用される材料の一種で、アクリル樹脂をベースとしてゴムに似た物性(柔軟性・弾性)になるように調整された材料となります。硬さを調整できる3Dプリンタもあります。

石膏

石膏は硫酸カルシムを主成分とする鉱物で、建材やギプスの材料としてだけでなく粉末固着方式の3Dプリンタの材料としても利用されています。脆いため力が加わるような用途には不向きですが、着色することができるためフィギュアの原型や模型の製作などに用いられています。

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この記事を書いた人

3Dモノづくりラボ編集部

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